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猫人

猫人、はじめます。 誰の中にも「猫人」はいます。 きっとあなたの中にも。
第1話は、高校生ラガーマンの話です。
男子校のラグビー部の僕には、そんなにたくさん女子と出会う機会があったわけではなく、多くの男子校生徒がそうであるように、女の子と出会うには秋の文化祭が1年の中で最大のチャンスということになる。
気づくとが僕は、森の中の道のはずれに横たわっていた。脇腹の異様な痛みと、顔からの出血が、猫人の存在が事実であったことを示している。しかも僕は全身裸だった。さらに、僕の下腹部には白い精液と思しき液体が付いている。僕のものかどうかはわからないと思いたいが、おそらく僕のものだ。
その日の帰りはまだ日没後の薄明の残る時間で、普段なら会社や学校帰りの人もちらほらいる時間だった。しかし、体育の日の祝日で人は少なく、森に向かう坂を登っているのは僕だけだった。
35歳の冬。僕はあの坂道の、あの森の前で猫人と会う。猫人は、今度は森の入り口に立ち、僕の正面に立っている。
猫人と僕は目があう。
あまりの醜さに、醜悪さに言葉が出ない。
猫人は僕の一歩手前まで来る。
逃げ出したいと思う。あらん限りのスピードで逃げ出したいと思う。しかし体が動かない。声も出ない。
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