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40歳のラブレター 手紙(1)

  • 執筆者の写真: いのきち
    いのきち
  • 2024年12月19日
  • 読了時間: 3分


40歳のラブレター


 今日は風の強い1月の夕方で、僕は会社のパソコンの前に座っています。でも、パソコンはスリープ状態で、買ってきた薄い水色の便箋を机に置いて、これからあなたに最後の手紙を書こうと思っています。最後に連絡をしたのがこの前の北海道の地震の時で、その時はフェイスブックのメッセンジャーで連絡をしましたが、今回は最後のメッセージになると思うので、思い切って手紙を書きたいと思います。もしかしたら長くなるかもしれませんが、おしまいまで読んでくれたら嬉しいです。


 そもそも最後の手紙というけれど、僕はあなたに手紙なんて一度も送ったことがないのではないかと思います。それが、なぜ改まって手紙を書こうと思ったのかというと、僕自身が、あなたとのことを忘れたくないと思ったからです。結婚をして4年が経ち、子供も産まれて、仕事も、大したことをしているわけではないけれど、それなりに忙しくしています。そんな毎日を過ごしていく中で、だんだんとあなたのことが、あなたへ持っていた思いが、どんどんとその後ろ姿が小さくなっていくことを微かに感じていて、でも、この間の地震の時に、真っ先に思ったのはあなたのことで、すぐに連絡して、無事だと知って、すっと心が落ち着きました。その時、改めて20年前のことを思い出したわけです。いや、20年前からの20年間がまだかすかな色を発していることに気づいた、という方が正確ですね。


 僕にとって、不自由で、不器用で、思い通りにいかないことばかりで、でも、一生懸命で、一途で、綺麗だったこの20年間のあなたへ思いを、僕は、忘れたくないと思いました。だから僕は、書いておこうと思ったのです。書いて、記録して、留めておこうと。


 それは、本来ならば、僕が勝手に書いて、僕自身のどこかにしまっておけばいいものです。 でも、こうして書こうと思い、どんな風に書こうかと思っているうちに、どうしても、あなたにも僕のこの思いを伝えたい、そしてできれば留めておいてほしいという気持ちを抑えられなくなってきました。もしかしたらあなたにとっては迷惑極まりないことかもしれないし、こんなことを手紙にしても、途中まで読んだら丸めて捨てられてしまうかもしれないです。だけど、それはきっと僕にはわからないことで、(あなたはわざわざ、「こんな手紙いらないから捨てたわ」とは言ってこないですから)だから僕は、この手紙をあなたに出したということ自体で、あなたと思いを共有した、と思うことができます。


 そこには、いいね、もつかないし、既読、もつかないからです。 そう思うと、手紙というのは、とてもいいツールですね。一方的に思いを伝えるには。


 ということで、僕は、あなたと出会ってからの約20年間のことを書きたいと思います。どんなことがあって、僕がどう思っていたか、感じていたかを。願わくばあなたが、この手紙を最後まで読んでくれることを。



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