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【妄想レビュー】 埼玉VS東芝 ータックルがお好きー

  • 執筆者の写真: いのきち
    いのきち
  • 2月13日
  • 読了時間: 5分

ラグビー

リーチは、開幕前に「連覇という言葉を使わない」と言っていた。

しかし、どれだけ自分たちがそう思おうと、周りはそうはさせてくれない。

常に「昨年の覇者」という形容詞でチームは語られ、

そこには「勝って当たり前」という無言のプレッシャーがかかっていく。




第6節を終え、東芝は明らかに苦しんでいた。


第2節神戸、3節の相模原こそ快勝したものの、開幕戦は横浜に前半を制され、浦安にはあわや金星献上というところまで追い込まれ、静岡にはフリゼルが不在の間に3トライを取られ、スクラムでは完敗し、黒星を喫した。


交流戦に入っても、前節のホンダ戦は、前半は2点差で勝っているけれど、内容は完敗だった。


2位ではあるけれど、1位を快走する、隙がなく、そして力強い試合を展開し続けている埼玉とは、現状では力の差があるのではないかと思われた。





2月の熊谷。風が強く冷えがする。

前半の風上は東芝。

しかし、試合は、風下の埼玉がキックゲームを巧みに制し、接点で東芝にプレッシャーをかけ、東芝に思うようなアタックをさせない。


最初のトライは、思わぬ形で東芝に生まれる。埼玉のSOの山沢が、キックミスを2つ重ねてしまい、自陣のゴール前のスクラムからモウンガにブレイクされてあっさりとトライ。


ただ、このプレーで小山がモウンガに抜かれているのですが、彼は今日、このプレーの復讐を最後の最後、決定的なプレーでお返しをすることになる。


意図せぬ形でトライを献上した埼玉は、慌てることなく、やることは変わらず着実にP Gで加点。

前半も、東芝は埼玉のディフェンスを激しく止めているが、接点でボールに絡みに行こうとするところで、微妙に反則になりボールを奪うことができない。


ただ、東芝は66%のポゼッションを取られながら、埼玉のアタックに対して、とにかくタックルをし続けた。

前半のタックルは、実に130。(埼玉は48)

それだけタックルしながら、ターンオーバーはわずかに1。。

ペナルティは東芝が8つに、埼玉が1つ。

数字だけ見れば、埼玉が東芝をボコボコに攻め続けながら、東芝がわずかに堪えているという構図。




しかし、東芝の今日の一人一人のタックルは、これまでのそれとは大きく違う。

ここ数戦に比べて、明らかにタックルが「強く」「激しい」。

埼玉という、明らかな強敵を迎えて、全員がタックルの鬼になっている。

というか、タックルが「楽しそう」ですらある。

強い相手に突き刺さる。

何度ボールを保持されても、喜んで入っていく。

痛いことが楽しい、

いわゆる「タックラーズハイ」状態になっているように見える。

多くの選手が。

真野、佐々木、ピアス、原田、小鍛冶、木村などなど。

彼らが、生き生きとタックルをしているように見える。




彼らのタックルのハイライトは、後半の最初の10分。

風上に立った埼玉が、東芝の22m前後で、10分間、ずっと攻め続ける。

それに対して、東芝は、明らかに1つの修正をする。

それが「タックルだけしよう、その後に無理にボールをスチールするようなことはやめよう」であった。

明らかに、タックルの後の接点での争奪戦で無理をすることなく、接点には人数が少なく、常に「タックル待機」のメンバーが13−14人いる。

そして、その一人一人が、嬉々としてタックルをし続ける。

ボールは埼玉が保持し続ける。そしてアタックする。

そこに、東芝の鬼タックルが刺さり続ける。

この10分、普段の埼玉ならばここで試合を決めたはずだ。

しかし、この10分、東芝は埼玉のアタックを完封する。




根負けした埼玉がボールをロストすると、

今度は、自陣から、キックでテリトリーなど目もくれず、一気に切り返してアタックをする。

アンストラクチャーからの得点力は、今は東芝が埼玉を上回るかもしれない。

自陣から、切り返して、埼玉から一気にトライを取れるのは今は東芝くらいか。


この後は、お互いのアタックの良さが炸裂し合う。

埼玉は竹山の決定力がチームを救い、

東芝は、何も考えずに、とにかくどこからでも攻め続けた。

松永のP Gが入っていれば、タマニバルの反則がなければ、、もしかしたら、東芝がまくっていたかもしれないくらい、東芝のアタックは迫力があった。


この迫力は、今シーズンの開幕戦、横浜との試合で、前半何もできなかったところから、前半の30分過ぎから、自陣の深くから蹴らずに攻め出した、そのまま後半もその勢いで、とにかく攻め続けて圧倒した、あの場面を思い出させます。


最後の5分は、埼玉は、ハーフウエーでも裏をガラ空きして、誘ったように見えます。蹴ることを。しかし、東芝は、そんなことには目もくれずに、正面突破を試み続け、土俵際に迫られた埼玉も、渾身のタックル、必死のタックルを繰り出し続け、最後は双方満身創痍の状態での痛み分けに。


埼玉は薄氷の引き分け。東芝は勿体無い引き分け、でしょう。




東芝は281回のタックルをして、251回が成功。90%の成功率。

埼玉は218回のタックルで、181回の成功。83%の成功率。


東芝はタックルがお好きなんです。

タックルをしている時が楽しそうなんです。

痛いことをしている時、嬉しそうなんです。


前節、ホンダにあわやのところまで押し込まれたのと同じチームとは思えない。


ラグビーチームには、チームが結束する、あるいは、チームに「ターボ」がかかるスイッチがあるんです。東芝の場合は、強い相手へのタックルがそれに見えます。静岡ならば、雨、がそれだったりするように見えます。


なんにしても、見ている人を、間違いなくラグビー好きにする、素晴らしい試合でした!



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